低身長の血液検査、その解釈について

低身長

こんにちは小児内分泌科医Nです

低身長で小児科に受診されると採血、手のレントゲン、成長ホルモン負荷試験などを行います

実際検査しても説明あまりされてなく、よくわからないという方は多いと思います

今回はその中の血液検査についてご説明します

低身長で小児科に受診され、血液検査をされたときの参考となれば幸いです

私たち小児内分泌科医が検査する主な項目についてご説明いたします

IGF-1(ソマトメジンC)

成長ホルモンは骨や筋肉の成長を促すため、身長が伸びます

しかし、成長ホルモンは夜中にでるホルモンのため日中に検査しても出ているか全く評価ができません

ここで検査するのがIGF-1(ソマトメジンC)です

成長ホルモンは直接骨に作用しますが、肝臓で代謝されます

そのあと放出されるのがIGF-1(ソマトメジンC)です

よってIGF-1(ソマトメジンC)は成長ホルモンと相関(成長ホルモン低下すればIGF-1も低下します)します

またIGF-1(ソマトメジンC)も骨に作用し、成長を促す作用があります

つまりIGF-1(ソマトメジンC)が低い子は低身長となる可能性が高いということを示しています

ただし注意点があります

タンパク質(栄養)摂取が低下している子はIGF-1(ソマトメジンC)が低下するということです

なので我々は栄養評価でも測定します

また年齢によって正常値が全く異なります

下にリンクを付けているのはIGF-1の基準値です

IGF-I基準値|成人の成長ホルモン分泌不全症 (pfizer.co.jp)

男女、年齢、IGF-1の結果を入力するとSD(標準偏差)が分かります

0が平均で、マイナスであればあれほど低く、プラスであればあるほど高いことを意味します

正常値はー2SD~+2SDです

-2SD以下は特に要注意なので必ずチェックしてください

TSH、FT3、FT4(甲状腺機能)

TSH、FT3、FT4は甲状腺機能を評価するものです

甲状腺は首のところにある臓器で、骨の成長を促し、身長を促進する作用があります

甲状腺機能が低下すると身長が伸びなくなります

よってTSH、FT3、FT4を評価し、甲状腺機能が現在どうかを診ます

まず甲状腺の生理についてです

TSHは脳の下垂体というところから出るホルモンで、甲状腺を刺激する役割を示します

そうすると甲状腺からFT3、FT4が放出され、骨の成長、代謝を促進します

つまりTSHは社長さん、FT3、FT4は平社員の関係を示します

例えば甲状腺機能が低下するということはFT3、FT4が低いことを意味します

平社員(FT3、FT4)が働かないと社長さん(TSH)がもっと働けと命令を出します

つまりTSHが上昇します

また甲状腺機能が上昇するということはFT3、FT4が高いことを意味します

平社員(FT3、FT4)が働きすぎるとと社長さん(TSH)が働くなといい命令するのをやめます

つまりTSHが低下します

下の表はまとめです

甲状腺機能低下甲状腺機能亢進
TSH上昇低下
FT3、FT4低下上昇

※ただし下垂体機能低下症(社長さんが何をしても全く働かない状態)は異なる結果を示します

LH、FSH(性腺刺激ホルモン)

LH、FSHは脳の下垂体からでるホルモンで性腺刺激ホルモンです

性腺とは男性の場合精巣、女性の場合卵巣のことをいいます

思春期が始まるとまずLH、FSHが高くなります

LH、FSHが精巣・卵巣を刺激し、男性ホルモン、女性ホルモンを産生し、男性らしい・女性らしい体へと成長します

以前お話しした通り、思春期が来るとあとどのくらい身長がのびるのかが分かります

詳細はこちらを見て頂ければ幸いです。

身長のメカニズム | 小児内分泌科医Nの病気説明と投資など (doctornno.com)

なのでLH、FSHを測定することで思春期が現在来ているかがわかります

またTurner症候群(X染色体異常)では卵巣が機能しないという特徴があります

その時はLH、FSHが異常の上昇が起こります

理由はLH、FSHが命令するホルモンなので先ほどと同様社長さんと思ってください

そして卵巣機能(ここでは女性ホルモン)が平社員と思ってください

平社員(卵巣機能)が働かない(低下する)と社長さん(LH、FSH)が働けと命令(上昇)します

通常の思春期と比べものすごい上昇します(LH、FSHの値が50以上)

その際はTurner症候群など疑い、染色体検査などさらなる検査を行います

亜鉛、ビタミンD、ALP(アルカリフォスファターゼ)

亜鉛、ビタミンDが低下すると低身長となります

亜鉛は成長ホルモンを刺激、ビタミンDは骨を刺激するからです

ALPはアルカリフォスファターゼといい、肝臓、胆のう機能などいろいろありますが、小児では骨新生のため高値(大人の約3倍)となります

またALPが異常低値の時は亜鉛欠乏、異常高値の場合はビタミンD不足となります

なので亜鉛、ビタミンDを調べなくてもALPを測定することでおおよそ予想できます

AST、ALT

AST、ALTは肝機能を示します

AST、ALTが上昇すると肝機能障害を意味します

肝機能障害があると身長が伸びません

なので必ずチェックします

Cre(クレアチニン)

Cre(クレアチニン)は腎機能を調べるものです

慢性腎不全は低身長の原因となります

慢性腎不全ではCre(クレアチニン)が上昇します

また筋肉量で上昇するため、小児では低値が正常値となります

簡易式ですが、小児の正常値ではCre=0.3 ✖ 身長(m)で計算します

例えば100㎝の身長だとします

Creの基準値は0.3 ✖ 1.0=0.3前後となります

例えば0.5だと腎不全が想起されます

まとめ

今回は主な血液検査の評価について説明しました

他にもいろいろありますが、上記理解していただければおおよそ大丈夫と思います

血液検査でわからないことがあればぜひお問い合わせでご連絡ください

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