こんにちは、小児内分泌科医Nです
本日は低身長の治療、治療の副作用などについて説明します
低身長の治療はいろいろあります
また原因によって治療法が異なります
前回の低身長の原因を見て頂ければより良い理解ができると思います
今回はその中で成長ホルモンについてお話しします
その中で成長ホルモンの適応疾患、投与回数、量、投与方法について説明させていただきます
成長ホルモンの適応疾患について
成長ホルモンが低身長の主軸となる治療です
成長ホルモンの適応として成長ホルモン分泌不全性低身長、SGA性低身長、Turner症候群、軟骨無形成症、軟骨低形成、Prader-Willi症候群、Noonan症候群、腎不全があります
大雑把に学びたい場合は先ほど紹介した低身長の原因(下記)を参照してください
各病気の具体的な説明はまた後日説明させていただきます
成長ホルモンの投与回数について
成長ホルモンの投与回数は1週間あたり6日、または毎日投与します
1週間の成長ホルモンの総合計の量は変わりません
また効果も変わらないためどちらを選ばれても大丈夫です
基本的には成長ホルモンを1日しなくてもいい日を作りたい人は1週間に6日投与、投与することを忘れやすい方は毎日投与を推奨しています
成長ホルモンの量について
またそれぞれ疾患でまた投与量が異なります
例えば成長ホルモン分泌不全性低身長、SGA性低身長を例に挙げます
成長ホルモン分泌不全性低身長はまず大前提として成長ホルモンが出ていないため低身長となる疾患です
なので成長ホルモンの投与量は少ない量(1日に必要量)だけで身長が伸びます
一方SGA性低身長では出生週数に対して小さく生まれた子が、そのまま小さくなるという病気です
成長ホルモンは正常であるというのが大前提となります
よって、身長を伸ばすためには成長ホルモンを大量に投与するしかないのです
以下に各成長ホルモンの適応疾患、成長ホルモンの量を提示します
ここで上記表の量の単位について説明します
例えば成長ホルモン分泌不全性低身長の場合0.175mg/kg/週です
1週間に体重(kg)当た0.175mg投与するという意味です
具体的には10kgの成長ホルモン分泌不全性低身長の児がいます
1週間に投与する量は0.175mg✖10=1.75㎎となります
毎日投与する方は1.75÷7=0.25mgを毎日投与するということになります
1週間に6日投与の方は1.75÷6=0.29㎎投与するということになります
ただこれは通常医師が計算し、投与量を指示するため患者さんが計算しなくても大丈夫です
体重が増加するたびに投与量が増加するということは重要です
投与方法
投与方法は寝る前に皮下注射を行います
なぜ寝る前かというと、成長ホルモンは夜の22時から2時に寝ているときに分泌されるため、生理的に合わせるためです
皮下注射ですがこれはインスリンの治療と同じで家で行います
場所はお尻、太もも、お腹、肩に投与します
具体的には下記の絵の青いところに投与します
参考文献:南江堂 2001 p61より
また注射の種類ですが主に2つに分かれます
1つは自分で投与量など設定し、投与する、2つ目は機械に投与量を設定し、機械で投与するという方法です
自分で調節(一般的な投与方法)する方の利点としては単純で持ち運びがしやすいという点です
例えば旅行の時とかいいのではないかと思います
欠点としては自分で量を合わせないといけない、また針が見えるため投与するとき子供が嫌がるという欠点があります
一方機械の利点は針が見えないため子供の不安が減ることがあります
また医師が量を設定しているため自分で設定しなくてもいいです
欠点としてはかさばるため、持ち運びがやや困難となったり、充電式のため電池が切れた場合、充電器も持っていく必要があり、よりかさばる可能性があります
投与方法としては以下の各ホームページを参照していただくのが一番わかりやすいため載せておきます
自分で調節する場合
機械の場合
を参考していただけたら幸いです
成長ホルモンの身長以外の利点について
成長ホルモン投与することで身長以外のいい効果が現れることがあります
それは成長ホルモン投与することで筋肉がつくという効果があります
低身長の子は足が遅かったりと運動が苦手な子が多いです
成長ホルモンを投与することで筋肉がつき運動が良くなったという子が多いです
そのことでさらに喜んでいただくことがあります
ちなみにサッカーのメッシも成長ホルモンを投与したみたいです
成長ホルモン投与の副作用
成長ホルモンを投与することは身長を伸ばす効果がありますが、必ずしも利点だけでなく欠点もあります
以下主な副作用について説明します
1、痛み
皮下注射するためどうしても痛みがあります
お尻が一番痛くはないですが、多少は痛いことがあります
人によっては寝てても起きない子がいるのでそれほどではないのですが。。。
2、皮膚硬結
同じ場所ばかり投与すると痛くなくなるのですが、皮膚が固くなることがあります
固くなると成長ホルモンの効果が減少します
なので投与する場所は毎日変更しましょう
昨日投与した場所と1cm離れたら大丈夫です
3、薬剤性糖尿病
成長ホルモンは血糖(血の糖分)を増加させる作用があります
そのため投与中に糖尿病を発症する場合があります
特にSGA性低身長では投与量が多いことや体質的に糖尿病になりやすいという子特徴があるため特に注意が必要です
よって3~6か月に1回は血液検査、尿検査を行い糖尿病が発症していないか確認する必要があります
4、脳腫瘍の悪化
もともと脳腫瘍があった場合腫瘍を増加させてしまうことがあります
よって治療前は必ず頭部MRIで脳腫瘍の有無を確認します
ちなみに新たに脳腫瘍を発生させるというデータはないので安心してください
まとめ
今回は成長ホルモンについて説明させていただきました
実際はほぼ毎日投与するためご両親のご協力がとても必要ですし、患児の理解も必要となります
ただ投与することで身長が伸びることが期待されます
5cm伸びただけで人生が変わると思います
皆様子供の成長のため頑張りましょう!!
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